- 獣医師
- 動物看護師
プリモ動物病院×ヨソウ
生田目 康道
株式会社JPR
代表取締役社長
布村 順一
株式会社JPR
取締役(人事部門統括)
布村順一:株式会社JPR 取締役(人事部門統括/獣医師)
大学卒業後、個人病院・イオンペットを経て株式会社JPRへ。2006年より15年間人材採用に従事し、月約100名の獣医師・動物看護師・トリマー・総合職との面談、面接を実施。年間約600名の獣医学生と交流を深める他、大学での特別講師も務める。
コロナ禍で変化した学生のコミュニケーション力
生田目: | 先日、小動物臨床に就職した新卒獣医師の 60%以上が1年目に辞めてしまっているという調査結果を目にしました。それは、獣医師を目指して勉学に励みながらも大学で形成されるはずである社会順応の機会が少なくなってきていることも一つの原因であると思いますが、布村さんはどう思いますか? |
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布村: | そうですね。私が学生の時は、ほとんど家にはおらず研究室にいるかアルバイトに精を出していることが多かったように思います(笑)。もちろん、周りの皆も同様で、先輩・後輩、時には遊びに来た卒業生が一同に集まり、勉強の話や仕事の話、未来像などを語り合ったのを覚えています。そこでそれぞれが持っている価値観や考え方が他人と違うことを知り、色々なモノの見え方が変わりました。言葉・雰囲気・身振り手振りで喜怒哀楽を表現し、自分の言葉の足りなさやどのような表現をしたら相手に思いが伝わるのかを学んだのだと思います。当然その中で、伝え方や相手への尊敬・配慮を忘れ不快にさせてしまったことや、時にはぶつかったこともあります。先生や先輩、そして後輩に対してどのようにコミュニケーションをとるべきか、それが自然と身についていきました。 今はそういったコミュニケーションを学ぶ機会が減っているためか、例えば向こうから挨拶されるのを待つというような、何にでも受け身の態勢でいる学生が増えたように感じます。 |
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生田目: | コロナの影響で、大学休学や研究室への入室制限がかかったことにより、交流の場自体が減り、そういったコミュニケーションが希薄になってしまったのでしょうか。 |
布村: | はい、昔とはだいぶ変わってしまいました。昔は「大学の思い出」と言えば「研究室」でしたからね。コミュニケーションが希薄になったことで、学生同士の対話の中から形成される“予備社会力”が備わらず、社会に出てから苦労している人をよく見受けます。上司・先輩との対話の中から節度を持った対応はどういったものなのか、また、後輩に合った指導やアドバイスをするにはどのようにコミュニケーションをとればいいのか、感覚がつかめないのでしょう。“予備社会力”が備わっていれば、新人研修プログラムの理解や個人病院等で研修機会がなかったとしてもOJTでの育成が可能ですが、今はコミュニケーション・対話の部分が不足しているため、育成自体が難しくなってきていると感じます。実習生を受け入れている院長たちに話を聞くと、対話に壁を感じる、最低限のマナーが備わっていない子も昔より多いという声を耳にします。 |
人の話を的確に捉えるコミュニケーションから学ぶ新人研修
生田目: | まずはコミュニケーション力が備わっていないと獣医大学で学んだことが活かせませんからね。 |
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布村: | その通りです。大学では病名からその検査法や症状を学びますが、実際の現場では、飼い主様との対話の中から病気を見出す、症状から一つ一つを除外して一つの診断に結び付ける、類症鑑別、除外診断が重要となってきます。そのため、プリモでは人の話を的確に捉えるコミュニケーションから学ぶ新人研修を行うようにしています。 大学生時代に学ぶ社会のルールと、社会に出てから研修で学ぶ真のルールを照らし合わせ、気づきを与える。そこで初めて社会人としてのマナー・作法・礼儀が統一されていきます。 先ほども言いましたが、今の学生の課題になっていることは、学生が学生生活で学ぶべき、社会に出るための土台となるルールを学ぶ機会が少なくなってしまったこと。 |
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そしてコミュニケーションではなく、何でも本を読めばわかると対話をしなくなる人が増えてしまっていることです。 もちろん、本を読むこと・知識を付けることは大切です。しかし、その知識をいつ・どのように使うか、使う場面やタイミングを見極め初めて、得た知識を活かすことができます。上司・先輩とのコミュニケーションを経て技術を学び、飼い主様とのコミュニケーションを経てペットの些細な変化から診断に繋げる。これらは技術・知識だけではない、社会人として必要なスキルです。それを実現させるためにも、自分自身が作法とマナーを学ぶことは、とても大事なことだと考えています。 |
動物病院で働く者として必要な『大人のマナー』
生田目: | マナーは、当たり前のようで奥が深く、大事なものですからね。また、そういったマナーやコミュニケーションは、動物病院だけでなく、どの場面でも役立ちますよね。では、動物病院で働く者として必要なマナーは何だと思いますか? |
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布村: | そうですね、例えば・・・、当たり前のことかもしれませんが、報告するということ。よく使われる報連相という言葉、わかっていてもできていない人は多くいると思います。また、掃除や整理整頓というのは軽視されがちですが、その動き一つで得られるものは多々あると考えています。誰もが使いやすい場所、導線を考慮したところに置くことでストレスの軽減や時間短縮にもつながります。掃除に関しても、掃除が行き届いていない病院には、自分の大事なペットを安心して預けられないですよね。 電話に関しても、今はスマホに慣れて自分の着信には気付いて出るものの、他の電話に関しては、意識の外にあり自分には関係ないと考えてしまう。 |
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悪気があってやっているわけではないことはわかりますが、結果、病院の信用につながる問題だと思います。あとは勤務時間の捉え方ですね。勤務時間というのは、身支度がすべて整い、頭の中で今日の業務の整理をした上ですぐに業務に取り掛かれる状態です。勤務時間に病院に着けばいいというものではありません。始動できる状態の上で、元気に挨拶をする。初歩的なことではありますが、こういったことが基礎にないと、土台は盤石にはなりません。これらの基礎ができるようになると、自分のやらなければならない事、学ばなければならない事の整理がつき、自分で判断(self-judge)ができるようになります。まさに『active manner for true self judgement=大人のマナー』です。 そんな、大人のマナー・作法を人材育成の一環として行い、飼い主様・ともに働くスタッフから信用・信頼が得られる人物となるように育てていけたらと思っています。その上で、技術・知識を身につけ、多くの人に頼ってもらえるような獣医師・動物看護師・トリマーになってもらうことを望んでいます。 |