Dental and Oral Surgery 犬 猫の歯科口腔外科
重度歯周病から歯内治療まで難治症例も対応しています。
歯科口腔外科とは
重度歯周病をはじめとする口腔内の疾患や歯折といった歯の怪我、口腔内のできものや腫れ物、口腔粘膜疾患、口腔内腫瘍などを専門に診察治療をするのが歯科口腔外科です。
-
白畑 壮 しらはた そう
- 学 歴
-
麻布大学獣医学部獣医学科卒業
麻布大学 大学院博士課程修了 - 所属学会
-
日本小動物歯科研究会
日本獣医腎泌尿器学会
日本獣医エキゾチック動物学会 - 専門分野
-
消化器内視鏡・腹腔鏡、歯科・口腔外科、
泌尿器科、エキゾチックアニマル
このような症状がある場合はご相談ください
- 歯
- ✔ 歯が欠けた・折れてしまった
✔ 歯の生え方がおかしい・重なっている
- 口の中
- ✔ 口臭がきつい
✔ 歯茎が腫れている
✔ 歯茎から血が出ている
- 顔
- ✔ 口の周りを触ると痛がる
✔ 口が閉まらない
✔ 目の下に傷ができている
✔ 頬が腫れている
- その他
- ✔ 柔らかいフードしか食べない
✔ 食べ方がいつもと違う
✔ くしゃみの回数が増えた
対象疾患
- ●歯周病
- ●歯の病気(破折、埋伏歯、含歯性嚢胞、変色 など)
- ●乳歯遺残
- ●口腔内腫瘍 など
治療例
【埋伏歯・含歯性嚢胞】
「来院理由」
3ヶ月前より下顎の右側が腫れており、徐々に腫れがひどくなっているとのことで歯科外来を受診されました。
「検査」
歯科レントゲン検査により、本来生えてくるはずの永久歯が下顎の歯肉の中に埋もれてしまっていることが判明しました。このような状態を埋伏歯(まいふくし)といいます。その埋伏歯の周りには、顎の腫れの原因と思われる嚢胞も確認できました。
下顎のレントゲン写真 | ポータブル デジタルレントゲン装置 |
「処置」
全身麻酔での歯科処置を実施し、埋もれてしまっている歯を取り除くこと、嚢胞に対する処置を行いました。処置を行った後、徐々に顎の腫れはひいていき、処置後2週間で顎の腫れはなくなりました。
処置前 | 処置後 |
【歯周病】
3歳以上の犬猫の8割に歯周病があるといわれており非常に多い病気です。
歯垢は毎日の生活でつきますが、その歯垢が歯石になるのに犬は3~5日、猫は7日といわれています。日々のデンタルケアだけでは維持が難しくなることが多く、全身麻酔をかけて超音波で歯垢と歯石を除去する必要があります。
写真の症例は麻酔下での歯石除去の処置を行い、口臭が改善されました。
【乳歯遺残】
通常であれば、約3カ月齢で乳歯から永久歯への交換が始まり、7カ月齢までにほとんどが交換し終わりますが、顎の小さい小型犬は小さな乳歯が永久歯に生え終わっても写真のように残ってしまうことがあります。
乳歯が残ると、歯の隙間に歯垢や歯石が蓄積し、歯周病や歯並びの悪化要因になりますので、麻酔をかけて抜歯する必要があります。
【猫の歯肉口内炎】
猫の口の粘膜に慢性の炎症が起こる病気です。
細菌やウイルスによる感染症、免疫系の異常などが関係していると考えられていますが、詳しい原因はまだわかっていません。
抜歯処置、抗生剤、抗炎症薬など様々な治療法がありますが、写真の猫ちゃん(右)のように難治性になることも多いです。
【歯肉形成術】
歯肉が過形成を起こし、歯周ポケットが深くなってしまうと、そのポケット内が細菌の温床になってしまいます。歯肉を一部切除し、正常な状態にもどす処置を歯肉形成術といいます。
歯肉の過形成が認められ、歯周ポケットが通常より深くなっています。歯肉炎も起こしてしまっています。(写真1)
過形成の起こっている歯肉の近縁を小さいメスを用いて切除し、適正な歯肉の輪郭を形成します。(写真2:処置前)(写真3:メスで切開線をいれている)
止血後、新たに出てきた歯面をスケーリング、ポリッシングをして終了です。(写真4)
(写真1) 歯肉の過形成で、歯周ポケットが深くなっており、炎症も起こしている状態 |
(写真2) 処置前 |
(写真3) 過形成を起こした歯肉の近縁を切除し、適正な輪郭を形成するため、メスで切開線を入れます。 |
(写真4) 処置後 |
【根管治療(歯内治療)】
破折で歯の中の神経(歯髄)が露出した際に行う治療です。歯髄を抜去して、詰め物をして被せものをすることで歯を保存します。
第四前臼歯での破折が最も多く、犬歯などでも起きることがあります。
折れた歯、赤い点が歯髄です | 歯髄を抜去します | 詰め物をします |
被せものをして、固めます | 処置後 |
歯周組織再生療法~リグロス~について
当院では、リグロス治療という歯周組織再生療法を取り入れています。
3歳以上の犬の約8割が歯周病といわれており、歯の病気は犬や猫と暮らす飼い主様の大きなお悩みの1つになっています。歯周病になってしまうと、細菌により歯槽骨や顎骨が破壊されて歯を固定する力が弱くなり、歯が自然とぐらつき抜け落ちてしまいます。
歯周病治療として細菌を歯周ポケットから除去することにより、歯周組織の健康は一時的に取り戻せますが、一度失われてしまった歯周組織は自然には元の状態へ戻ることはありません。
しかし、歯周組織の破壊の程度が局所にとどまっている段階であれば、歯周組織を再生させることにより歯を残すことが期待できます。
リグロス治療とは?
リグロス治療とは、歯周組織再生療法の1つの方法で、歯根に薬剤を投与することで歯周組織の再生を促します。歯周病であっても「歯を残してあげたい」という飼い主様のご希望に沿える治療法です。 歯周病によって破壊されてしまった歯槽骨などを、「bFGF」(トラフェルミン)という歯周組織再生用材料(リグロス)を用いて再生を促します。リグロスの主成分(トラフェルミン)は若齢期に歯が生え始める際に重要な働きをする蛋白の一種です。 リグロス治療は、人の歯科では世界中で使用されている再生療法です。しかし、動物の歯科ではまだ取り入れている病院が少ないのが現状です。
図1
図2 歯肉の切開
図3 歯肉の剥離
歯周組織の骨が溶けて欠損しています
図4 欠損している歯周組織の骨にリグロスを塗布します
図5 縫合をして処置終了です
リグロスの使用により100%正常な歯周組織の再生が期待できるものではありませんが、犬猫での治療成績も報告されています。 この治療法に関するご質問等がございましたら、プリモ動物病院 古淵/歯科・内視鏡センターまでお問い合わせください。
設備紹介
歯科用ポータブル式レントゲン照射器
通常のレントゲンと比べて歯根や顎の骨などのより詳細な情報を得ることができます。
歯槽骨の溶解度などが分かるため、歯周病の進行具合なども評価することができます。
歯科処置ユニット
歯石の除去や歯の研磨、ドリルなど歯の処置を行うために必要な機材が揃っており、これ1台でスケーリングから抜歯まで行うことができます。
超音波スケーラー
歯石除去を行う際に使用する機器です。 超音波により振動し、歯石を破砕・除去します。先端から水が同時に出ることにより安全に歯石除去を行うことができます。
ポリッシング
歯石除去後、歯の表面のポリッシング(研磨)に使用します。
歯の表面をツルツルにし、再び歯垢・歯石が付きにくくします。
ブラシ、ラバーカップと2種類を使用し、歯の表面を研磨します。
歯科用ドリル
歯を抜く際に使用するなど、歯科処置にはかかせない機器です。
このユニットでは冷却水が同時に出るため、ドリルによる過熱を防ぐことが可能です。
スリーウェイシリンジ
水、空気、霧(3WAY)をこのシリンジから出すことができ、空気や水を歯にかけて歯の診断に使います。
歯を削るときの発熱防止のために、このシリンジで歯に水を注入しながら削るときもあります。
歯石を削った後、口腔内のお掃除の際にも使用します。
歯科用サクション
口の中の、唾液や水を吸引するために使用します。
水などを誤嚥しないようにするために、必要な機器です。
デンタルミラー
歯医者さんといえば、この器具を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
奥歯など見えづらい歯の裏も、このミラーでチェックします。
歯周プローブ
歯周ポケットの深さを測定するために使用されます。
先端についている目盛りでポケットの深さを測定できます。
ハンドスケーラー
超音波スケーラーで歯石を除去した後、歯と歯の間などの細かい部分にはこちらのスケーラーを使用します。
異なる形状のハンドスケーラーを使い分け、細かな部分の歯石も確実に除去します。
対応病院はこちら
口腔外科の診療については、下記に記載のある病院のみの対応となります。
その他の専門科診療
-
整形外科
犬や猫の骨折・靭帯損傷・関節疾患・椎間板ヘルニアなど、特殊な技術と機材が必要となる治療に関しても、専任の体制で対応しています。
-
リハビリ・整形内科
整形内科では、手術回避のための包帯やキャスティング・サプリメント療法・リハビリ・食事指導など、動物たちが日常の生活に戻るために必要なケアを行っています。
-
皮膚科
食物アレルギーをはじめとするアレルギー症状、膿皮症や感染症など難治性の症状も含め様々な治療に対応しています。
-
一般歯科
3歳以上の犬·猫の80%以上が歯周病にかかっているといわれています。様々な病気予防の観点からも、普段からのケアと早めの治療がとても大切です。
-
予防歯科
お口の健康は寿命に直結しているといわれています。お口の健康を保つため、ホームデンタルケアを中心とした“予防”に特化した口腔ケアを行っています。
-
腫瘍科
乳腺腫瘍・リンパ腫・肥満細胞腫などに対し、CT検査や抗がん剤治療など様々な腫瘍に合わせた診断・治療に対応しています。
-
腫瘍科
セカンドオピニオンセカンドオピニオンとは、「現在治療されている病院での診断や治療方針について、他の獣医師に意見を聞き、理解を深めること」です。
-
眼科
日常多く見られる結膜炎・角膜疾患から難治性のドライアイ、角膜潰瘍まで内科的治療だけでなく外科的対処をしなければならない疾患まで対応しています。
-
消化器内視鏡
多くは異物の誤飲対応において、内視鏡を使用いたします。開腹手術を行わずに異物を摘出できるため、身体への負担を大きく軽減することができます。
-
循環器科
犬の心臓病で多い僧帽弁閉鎖不全症や猫で多い心筋症をはじめ、様々な心臓病に対する治療に対応しています。
-
腹腔鏡
腹腔鏡を使用した避妊手術は、傷が小さく痛みも少ないため、日帰り手術でおこなうことができます。
-
エキゾチックアニマル
うさぎ・ハムスター・フェレットなどの小動物、鳥類を診療しています。