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2020年6月25日
犬と猫の病気

脾臓の役割と病気

体の中にあるすべての臓器は、それぞれに多くの役割があります。
そのなかで、脾臓(ひぞう)という臓器について、名前は聞いたことがあっても実際どんな働きをしているのか、知らない方も少なくないのではないでしょうか。

今回は脾臓の役割と病気についてお話します。

脾臓の役割

脾臓は犬や猫がバンザイしたときに、左側の肋骨の下あたりにあります。
その上には胃が、脾臓の下の背中側には腎臓があり、細長い靴べらのような形をしています。
そして左側の一部は、脂肪の膜によって胃にくっついています。

脾臓はたくさんの血液を貯えられる構造になっていて、必要に応じて大きさが変化します。

脾臓の働き

脾臓は大きく分けて、4つの仕事をしています。

1.血液の貯蔵庫

正常な脾臓には、血液の成分である赤血球や血小板が予備として貯えられており、出血した時や運動などで酸素が少なくなった時に、この貯めていた血液が全身に送り出されます。犬では全身の血液の約30%が、脾臓に貯えられています。

2.血液の処理場

脾臓は血液にとって害のある細菌や異物などの侵入物、生体内の老化した赤血球や白血球、老廃物、さらに病的な赤血球などを処理する役目があります。また、それと同時に処理した血液の中から血液を造るのに必要な材料だけを再度取り込み、必要な時に供給もしています。

3.免疫系に大きく貢献

脾臓は免疫系における最大の臓器で、リンパ球を作る場所があります。リンパ球は血液中に進入した細菌や異物を自らの中に取り込んだり、それらに対する抗体を作る働きがあり、健康を維持するためにとても重要な防衛機能を持っています。よってそのリンパ球を作る脾臓は、免疫に大きく関与しているということになります。

4.血液を造る

犬や猫がまだお母さんのお腹の中にいる胎児の時は、脾臓では血液を造る働きもしています。生まれて成長するとともに、血液を造る働きは脾臓に代わって骨髄が行うようになります。しかし、白血病のような骨髄の病気のときには骨髄で血が造られなくなるため、休火山が復活するように再び脾臓が血液を造るようになります。これを「骨外造血」といいます。

脾臓の病気

脾臓にもいろいろな病気があります。ところが、普段は胃の後方に隠れていて、もし異常があっても自覚症状がほとんどなく、発見するのが遅れてしまいがちな臓器です。そのため、全身症状をより注意して観察することが大切です。

脾臓に異常がある場合、発熱・元気消失・食欲の低下・貧血・黄疸・リンパ節の腫れ・おなかの膨らみ・出血傾向・腹水・浮腫などの症状がみられます。脾臓の働きからもわかるように、脾臓の病気の多くは血液関係のものです。

【脾臓にみられる代表的な病気】

脾腫

血液の病気、炎症、腫瘍、感染症など、その原因が何であれ、脾臓が正常の大きさの2倍以上に腫れてしまうことを、脾腫(ひしゅ)といいます。犬では胃がねじれてしまう胃捻転が起こりやすく、胃にくっついている脾臓も一緒にねじれて腫れることもあります。

また、犬ではマダニが血を吸う際にうつるバベシア症、猫では猫同士のケンカなどでうつるヘモバルトネラ症などに感染すると、赤血球に異常が起こり、それを処理する目的で脾臓が赤血球を多量に取り込むため、貧血と同時に脾腫が起こります。

脾血腫

脾臓の中で出血が起こり、それにより内部で血が貯まる状態です。原因としては交通事故、打撲による脾臓の損傷、脾臓がねじれる脾捻転などがあります。

免疫介在性溶血性貧血

この病気は脾臓そのものの病気ではありませんが、免疫系に関わるもので、何らかの原因によって自分の赤血球に対する抗体が作られ、脾臓をはじめ肝臓、骨髄内、血管内で赤血球が壊されてしまう病気です。治療として免疫を抑える薬を投与しますが、血液の貯蔵庫である脾臓がこの病気を悪化させるので、脾臓自体を摘出することもあります。

このような病気、もしくは事故や腫瘍で脾臓がなくなっても犬や猫は不自由なく生きていくことができます。しかし、摘出後は免疫力が低下するので感染症には注意が必要です。

腫瘍

脾臓の腫瘍は1/3~2/3が悪性腫瘍で、血管肉腫・リンパ腫・肥満細胞腫・悪性組織球腫・形質細胞腫などがあります。
ただし、血腫や良性腫瘍との区別が難しいため、開腹手術で脾臓を摘出し、どんな病気か病理組織検査を行なわないと診断できないこともあります。悪性腫瘍でなければ、脾臓を摘出することで完治できることもあるので、きちんと診断することが重要です。

まとめ

脾臓は、血液や免疫にとても重要な役割を果たしています。病気で切除してしまっても犬や猫は生きていくことが可能ですが、脾臓の異常は血液などの全身性疾患を示すことが多いため、やはり病気の早期発見のために日頃から注目すべき臓器だといえるでしょう。

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